「ゆきだるま」や「風が吹くとき」などの作品で知られるイギリスの絵本作家、レイモンド・ブリッグズ。漫画のようなコマ割りで、イギリス風のユーモアが各所にちりばめられた独特の作品は、日本でも大人気です。
初期の作品であるサンタのシリーズでは、手づくりキャンピングカーで世界旅行に出かけるサンタの、波乱に満ちた休暇が描かれています。
サンタにも夏休みがやってきた。寒さが大嫌いなサンタ氏は、リフレッシュのための旅行を計画します。きゅうくつなホテルよりも、気楽なキャンプがいいなあ。でもテントだと風で飛ばされたりしちゃうかも…。そこで彼は思いつくのです。「そりをキャンピングカーにかいぞうして、そらをとぼう!」
目的地のフランス語の勉強をしながら、キャンピングカーをつくり始めるサンタ氏。車体はサンタカラーの赤色に。ベッドもキッチンもついている、本格的なキャンピングカーが完成すると、山のような荷物を積み込みます。紅茶や豆の缶詰を忘れないあたりが、実にイギリス的。これだけの荷物を運べるのは、キャンピングカーの強みですよね。
キャンピングカーにはハンドルもついているけれど、サンタですから動力はトナカイです。一番後ろで引っ張られている木の小屋はなにかなあと思っていたら、のちほどトナカイの小屋であることが判明しました。なるほどね!
その後、サンタ氏は異文化体験を満喫しながらフランス、スコットランド、アメリカはラスベガスへと旅を続けます。各地で子供たちに正体がばれそうになるたびに移動をくりかえしており、サンタの苦労もしのばれる…。
いよいよお金も使い果たし、住み慣れた家に戻ると、すでに子供たちから手紙が届いている。クリスマスに向けて準備が始まるんですね。旅の余韻と、自宅に帰ってきた安らぎがしみじみと心に広がります。
ちなみにペットの犬と猫は出発前にペットホテルに預けていましたが、連れて行ってもよかったんじゃないかと思ったり。ペットと一緒に旅をできるのが、キャンピングカーの大きな魅力のひとつですよね。
絵本ですからページ数は少ないのですが、信じられないくらいぎゅっとお話のつまった、わくわく感満載の本です。こんな風に、国境もひとっとびなキャンピングカー旅がしてみたいなあ~。
「サンタのなつやすみ」
レイモンド・ブリッグズ作/さくまゆみこ訳 あすなろ書房 1,300円(税別)
コメント